介護の将来を考慮すると介護スタッフの希望に応えて、マネジメントの立場で、「お互いによし」をつくって行かなければならないと思います。

 まずは、スタッフが働きたいと思う職場をつくることにつきると思います。それは、「入居者(利用者)にとってよし」となる結果をもたらすはずです。離職率の低下によって、介護スタッフの技術蓄積が進み、入居者(利用者)お一人おひとりのケアプランに対する理解も深まりサービスの質が向上するはずです。離職者を穴埋めするため採用した新人指導のための教育時間を減らすこともできると思います。

 働きたい職場にするためには、賃金カーブの改善も必要でしょう。10年の経験を積めば、家庭を維持し希望が持てるような賃金にする必要があります。あわせて、介護スタッフの向上心を満たす施策を充実することです。

 例えば、賃金カーブの改善と平行し、介護のプロフェッショナルとしてのキャリアパスを整備して、スタッフ自身が成長して行く目標を示すとともに、評価の基準を明らかにしたいものです。また、入居者のためによい仕事ができるように、研修やQCサークル活動※1、あるいは一部で行われている「研究活動」などが当たり前にできる職場にして行かねばならないと思います。

 また、現場の無理を放置する働かせ方があるとすれば改善しなければならないことは当然のことです。高い志を持って介護の仕事についたにも関わらず、現場の改善も進めようとしないリーダーシップの不在に嫌気がさして職場を離れるケースもあると聞いています。介護スタッフが働きやすい現場をつくるという管理者の意思が感じ取れれば、スタッフの職場へのロイヤルティ(loyalty)も向上するでしょう。

ともあれ、スタッフが働きたいと思う職場をつくったところが、少子高齢化時代に生き残る施設になると信じて、事業の戦略や方針を定めたいものです。


注1:QCサークル活動
QCとはquality control(品質管理)の略で、QCサークル活動とは、職場内の自発的な小集団による、製品・サービスの品質改善や生産性改善、安全対策などへの取り組みを言います。グループ全体の能力の向上、主体性の開発による人材育成、職場活性化などの効果が期待できます。1960年代に製造業の現場で生まれ日本の国際競争力を高めたとも言われています。その趣旨は、向上心の旺盛な介護スタッフに受け入れてもらえるに違いありません。